上目遣いの潤んだ瞳

「へえ~ふ~ん、可愛くないことを言うのはこの口かな?」
「いひゃいいひゃいはなひへえ……!」
 それってオマエの自業自得なんじゃねえの? などと相方に対して何とも情のないことを言う髙羽の頬を羂索は遠慮なく引っ張った。容赦のない指の力に髙羽が涙を滲ませてこちらを見上げる。痛みに耐える潤んだ瞳に、羂索の身体のどこかからきゅんと音がした。
(……うん? きゅん?)
 視線を落として音と共に軋んだような気がした胸に手を当ててみる。きゅん? きゅんってなんだ?
 初めて味わう感覚に羂索が心の中で首を捻っていると、未だ羂索の指に頬を引っ張られたままの髙羽が喉を震わせて弱々しく抗議の声を上げた。
「けんひゃくはなひへよぉ……」
 かけられた声に改めて髙羽を見やると、不思議なことにまた胸からきゅん、と音がする。
 困り眉の上目遣いに潤んだ瞳。
 理由は分からないけれど、髙羽のこの顔を見ると自分の胸から音がするらしい。理由は分からないけれど、自分はこれがもっと見たいらしい。
「髙羽」
「なひ?」
「もうちょっと強く引っ張ってもいい?」
「なんれ……!?」


書いた後に「似たようなくだり『さよなら、幻』で書いてたな」と、気づきました。ギブミー引き出し。

20240524